『マイレージ、マイライフ』のジェイソン・ライトマン監督が、オスカー女優のシャーリーズ・セロンと『ヤング≒アダルト』に続く再タッグ

かつて夢見た〈未来〉とは違う〈今〉にため息をつく大人たちに、
目の覚めるサプライズを贈る、
ミステリアスな人生のリフレッシュ・ムービー

「わたし、ひとに頼れないの」──仕事に家事に育児と、何ごとも完璧にこなしてきたマーロだが、3人目の子供が生まれて、ついに心が折れてしまう。そんな彼女のもとに、夜だけのベビーシッターがやって来る。彼女の名前はタリー、年上のマーロにタメグチで、ファッションやメイクもイマドキ女子だが、仕事ぶりはパーフェクト。荒れ放題だった家はたちまち片付き、何よりマーロが笑顔と元気を取り戻し、夫のドリューも大満足だ。さらにタリーは、マーロが一人で抱え続けてきた悩みの相談にのり、見事に解決してくれる。だが、タリーは何があっても夜明け前に姿を消し、自分の身の上は決して語らない。果たして彼女は、昼間は何をしているのか? マーロの前に現れた本当の目的とは──?
マーロに扮するのは、『モンスター』でアカデミー賞®を獲得したシャーリーズ・セロン。ハリウッドでも突出した美貌を封印して18キロの増量に挑み、何ごとにも頑張りすぎて疲れてしまった女性の魂の叫びを届け、熱い共感を呼んでいる。マーロの“救世主”となる謎だらけのタリーには、『ブレードランナー 2049』で鮮烈なインパクトを残したマッケンジー・デイヴィス。
監督は、『JUNO/ジュノ』、『マイレージ、マイライフ』で、アカデミー賞®に2度ノミネートされた名匠ジェイソン・ライトマン。前作同様、ほろ苦い運命に直面した人々が、光の射す方へと歩き出す姿を描くが、本作ではさらにラストに驚きの仕掛けが用意されている。目の覚めるエンディングに向かって、シンディ・ローパーやヴェルヴェット・アンダーグラウンドなどの大ヒットナンバーも、ドラマティックな展開を予感させる。
タリーの謎が解ける時、もうひとつの物語が立ち上がり、観る者の心もケアしてくれる、ミステリアスなヒューマン・ドラマ。

もうすぐ3人目の子供が生まれるマーロ(シャーリーズ・セロン)は、大忙しの毎日を送っている。娘のサラ(リア・フランクランド)は手がかからないが、息子のジョナ(アッシャー・マイルズ・フォーリカ)は情緒が不安定だ。今日も姉弟が通う小学校の校長に呼び出され、ジョナをサポートする専属教師を自分で雇ってほしいと言われてしまう。夫のドリュー(ロン・リヴィングストン)は優しいが、家事も育児も妻に任せっきりで、マーロもそれが当たり前だと思っていた。

ある日、事業で成功して贅沢な暮らしを送るマーロの兄のクレイグ(マーク・デュプラス)が、出産祝いに夜専門のベビーシッターを手配してくれると言う。見知らぬ人に赤ん坊を預けることに抵抗と罪悪感のあるマーロは断るが、クレイグは妹に強引にシッターの電話番号を渡すのだった。

無事に女の子を出産したマーロだが、家事は膨大に増えていた。さらに、再び校長に呼び出され、ジョナには違う学校へ行ってもらうと言われ、遂に感情が爆発し、校長を怒鳴りつけてしまう。
帰宅したマーロは、もはや限界と夜間のベビーシッターを頼む。22時半に現れたタリー(マッケンジー・デイヴィス)と名乗る若い女性を見て、唖然とするマーロ。おへその見えるTシャツにジーンズのファッション、いきなりタメグチのイマドキの女の子だったのだ。だが、戸惑うマーロにタリーは、「私を頼って」と自信たっぷりに宣言し、2階でゆっくり眠るようにと促すのだった。

翌朝、目覚めると、タリーの姿はすでになく、代わりに8年間全く掃除していなかった1階のリビングとキッチンが、ピカピカになっていた。マーロは夫に、「彼女は何もかも完璧。なんだか、世界が明るくなった」と、久しぶりに晴れ晴れとした顔で微笑むのだった。
それからというもの、タリーは“完璧”を更新し続ける。さらに、「人生の全部をケアしなきゃ」と、昔話や愚痴を聞いてくれ、悩みごとの相談にまで乗ってくれ、いつしか二人は友情を結んでゆく。

だが、タリーは何があっても夜明け前に姿を消し、昼間は何をしているかなど、自分のことは一切語らないのだった――。

1977年、カナダ生まれ。『サンキュー・スモーキング』(05)で長編映画監督としてのデビューを飾る。2作目の『JUNO/ジュノ』(07)でアカデミー賞®監督賞にノミネートされ、一躍若手実力派監督として注目される。続くジョージ・クルーニー主演の『マイレージ、マイライフ』(09)では、アカデミー賞®監督賞と脚色賞にノミネートされ、ゴールデン・グローブ賞、英国アカデミー賞の脚本賞を受賞し、常に世界で新作を待ち望まれる存在となる。その他の作品は、『ヤング≒アダルト』(11)、『とらわれて夏』(13)、『ステイ・コネクテッド~つながりたい僕らの世界』(14・未)など。また、プロデューサーとしても活躍、『クロエ』(09)、大ヒット作『セッション』(14)、TVシリーズ「カジュアル」(15~17)、『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』(15)の製作総指揮を務める。新作は、ヒュー・ジャックマン、J・K・シモンズ出演の『The Front Runner』(18)。

1978年、アメリカ、イリノイ州生まれ。脚本家デビュー作であるジェイソン・ライトマン監督の『JUNO/ジュノ』(07)で、アカデミー賞®、英国アカデミー賞を受賞し、ゴールデン・グローブ賞にノミネートされ、新たな才能の出現と話題となる。その後、ライトマン監督とは、『ヤング≒アダルト』(11)と本作でタッグを組む。その他の作品は、『ジェニファーズ・ボディ』(09)、ジョナサン・デミ監督の『幸せをつかむ歌』(15)など。また、スティーヴン・スピルバーグ製作総指揮のTVシリーズ「ユナイテッド・ステイツ・オブ・タラ」(09~11)、「ワン・ミシシッピ ~ママの生きた道、ワタシの生きる道~」(15~16)で、製作総指揮と企画を手掛けている。

1977年、アメリカ、カリフォルニア州生まれ。ジェイソン・ライトマン監督とは、短編映画で初めてタッグを組んで以来、『JUNO/ジュノ』(07)、『マイレージ、マイライフ』(09)、『ヤング≒アダルト』(11)、『とらわれて夏』(13)、『ステイ・コネクテッド~つながりたい僕らの世界』(14・未)、新作の『The Front Runner』(18)も手掛けるなど、なくてはならない存在となる。その他の作品は、マーク・ウェブ監督の『(500)日のサマー』(09)、ドリュー・バリモア主演の『遠距離恋愛 彼女の決断』(10)、アイヴァン・ライトマン監督の『ドラフト・デイ』(14)、ドウェイン・ジョンソン主演の『ベイウォッチ』(17・未)、TVシリーズ「グッド・ドクター 名医の条件」(17)など。

大ヒットシリーズの新たな三部作の第一弾となる、J・J・エイブラムス監督の『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(15)に俳優として出演する。その縁で、J・J・エイブラムス製作、ダン・トラクテンバーグ監督の『10クローバーフィールド・レーン』(16)の編集を手掛けて高く評価され、短いキャリアながら、本作にも抜擢される。その他の作品は、『The Unrecovered』(07)、短編映画『All in All』(11)など。

1978年、アメリカ、ミズーリ州生まれ。マーク・ウェブ監督の『(500)日のサマー』(09)と『gifted/ギフテッド』(17)に『さよなら、僕のマンハッタン』(17)、ベネット・ミラー監督の『フォックスキャッチャー』(14)などの傑作の音楽を担当して称賛される。その他の作品は、『プールサイド・デイズ』(13・未)、『WISH I WAS HERE/僕らのいる場所』(14)、ブレイク・ライヴリー主演の『アデライン、100年目の恋』(15)、『ストーンウォール』(15)、ブラッドリー・クーパー主演の『二ツ星の料理人』(15)、『NERVE/ナーヴ 世界で一番危険なゲーム』(16)、『あしたは最高のはじまり』(16)、モーガン・フリーマン主演の『ジーサンズ 初めての強盗』(17)など。

エミリー・カー・アート&デザイン大学でメディア・アーツと映画を専攻して学位を取得する。デミ・ムーアの衣装を作り始めた時に、映画とTV業界でのキャリアをスタートする。主な作品は、『トム・ベレンジャー 逃亡者』(08)、『ザ・テロリスト』(09・未)、TV映画「デス・スピード」(09)、TVシリーズ「シャッタード ─多重人格捜査官─」(10~11)、「ENDGAME ~天才バラカンの推理ゲーム」(11)、「ワールド・オン・ファイアー」(12)、TV映画「タスマニアン・デビル」(12)、『12ラウンド/リローデッド』(13・未)、エレン・ペイジ主演の『スイッチ・オフ』(15)、TVシリーズ「溺れる女たち ~ミストレス~」(15)、『バース・オブ・ザ・ドラゴン』(16)など。

本作のアイディアが生まれたのは、プロデューサーで脚本家のディアブロ・コディが3人目の子供を出産してすぐあとの2015年だった。二人の幼い子供に時間とエネルギーを費やしていたコディは、自分に赤ちゃんのために必要な体力がないことをはっきり自覚していた。そのため彼女は、夜の10時から翌朝までの夜間ベビーシッターを雇った。コディは「救世主のように思えたわ」と語る。
その経験から生まれた企画は、彼女が脚本家として守っている基準に合致した。「私が負っているミッションは、今まで一度も見たことがない女性の役を書くことなの」と、コディは説明する。「分娩後の気持ちの落ち込みを描いた映画は、観たことがなかったわ。まだ描かれていない女性特有の経験はたくさんあると思うから、これからもそういうテーマを扱っていくつもりよ。」
コディは脚本を書き始める前に、ジェイソン・ライトマンに監督を依頼した。アイディアを聞いたライトマンは、どんな展開になるのかとワクワクしたと振り返る。「ディアブロは、悪びれない女性たちを書いてきた。頭が切れて立派で、おもしろい人たちだが、同時に大きく欠けているところがある。女性も男性も、彼女が描く登場人物たちに共感できるのは、そのためだと思う。」

ライトマンは、コディの脚本についてこう語る。「親としての役目だけでなく、一つの章を終えて自分の若さに別れを告げる瞬間についても語っている。父親になって驚いたのは、子供が鏡となって自身の子供時代を振り返り、自分がどんな子供だったかに初めて気づいたことだ。ディアブロは、マーロとタリーの関係を、マーロが自分の子供たちをもっとよく理解する方法として利用した。そして、タリーを鏡として、マーロが自分を見直す手段にもしている。」
その後の数か月、ライトマンは新生児の母をリアルに描いた映画を作ることに責任を感じ、若い母親たちのグループをリサーチしたと振り返る。「一人きりの夜のつらさに対して敬意を払いたいと思い、とても個人的な質問を詰め込んだアンケートを母親たちに送った。非常に率直な答えばかりで驚いた。出産が彼女たちの睡眠や生理機能だけでなく、他の子供たちや夫、結婚生活、セックス・ライフにどれだけ影響を与えたかということにも驚いた。あのアンケートは、とても助けになったね。」
20代に戻れないことは、マーロが受け入れなければならないことの一つだ。「これは間違いなく、中年の危機を描いた映画よ」とコディが指摘する。「男性の中年の危機のことは誰でも知っていると思うわ。でも、女性が中年になった話は多くない。ある意味、それは通貨を失ったような感じね。なぜなら、日ごとに年を取り、魅力を失っていくからよ。そして女性は、姿かたちで判断される世界に生きているわ。」
意図的ではなかったかもしれないが、本作は『JUNO/ジュノ』と『ヤング≒アダルト』に続く3部作の最終章だ。3作とも、とてもはっきりした個性と観点を持った女性が主役で、彼女たちは自分の思い通りに人生に取り組む。ライトマンは、「ディアブロは3作で、人生の3つの異なるステージにいる登場人物を書いた。どの映画も、幸せを見つけることがいかに複雑かを探求している。」

ライトマンとコディは、『ヤング≒アダルト』の主役、シャーリーズ・セロンと再びチームを組んだ。前作とは全く違うが、役者にとっては同じぐらいのチャレンジングな役だ。ライトマンがセロンを絶賛する。「これは容易な仕事ではない。ディアブロが書く役は決して簡単ではない。セリフには微妙なニュアンスがあって、厄介でユーモラスで、それにちょっと変わっている。シャーリーズにはそういう役を引き受ける勇気があり、ひるまずに挑み、観客に媚びることは決してない。彼女は必要な程度に嫌われる役にも、魅力的でない役にもなれる。ゴールはリアルにすることで、彼女はそのために必要なことは何でもやる。その姿勢は、胸が引き裂かれるような瞬間でも、またユーモラスな瞬間でも変わらない。」
セロンは、すぐに作品に全力を傾ける気になったと説明する。「どこかでジェイソンにばったり会った時に、『僕たちの次のプロジェクトが手に入った』と言われたの。私はすぐに『いいわね! いつ、どこでサインするの?』と言ったわ。『ヤング≒アダルト』のあとで、私たちはお互いにまた一緒に組みたいと思っていたの。私はジェイソンのセンスを、とても信頼しているわ。彼は私のことをよく理解してくれて、やりがいがあり、追求したいと思うような題材がどんなものか、よくわかっている。だから、これがとても特別なものになることも、既にわかっていたの。」
セロンは脚本を読んで、どれほど特別な作品かを知った。脚本家として最高レベルの技術が発揮されていると同時に、二人の子供の母として彼女が強く共感するストーリーでもあった。セロンは、「こんな親の役目について描いたものは、観たことも読んだこともないし、感情的にとてもむき出しの経験だった」と振り返る。
また、セロンは典型的な描写が全くないことに驚いたと指摘する。「この映画は、親になった人が経験することだけど、必ずしも気軽に口に出せないことについて、とても率直に描いている。そこがとても気に入ったわ。マーロに共感できたし、彼女に夢中になった。」

ライトマンは2013年に、『あなたとのキスまでの距離』でマッケンジー・デイヴィスを初めて観て、その独特の存在感と明らかな知性に衝撃を受けたと振り返る。「マッケンジーが、その目で見せるありとあらゆる細かいこと、顔の表情や指で見せるすべてのことにエネルギーが感じられた。彼女とシャーリーズを一緒にすることは、素晴らしい考えだと思ったね。そして、それは正しかったことが証明された。二人の相性は申し分なかった。」
セロンは、デイヴィスの役へのアプローチの仕方から、強い印象を受けたと語る。「マッケンジーは知識があることを感じさせながらも、とても天真爛漫にも見える。それは、大変素晴らしい矛盾で、タリーに対するマーロの反応を演じる上で、非常に役に立ったわ。彼女は向き合って一緒のシーンを演じる相手として、力のある女優よ。おかしくて変わったことを試そうとするところが、この役にとてもぴったりだった。」
デイヴィスもセロンを称賛する。「シャーリーズは、仕事に対して自分がリスクを冒していることに、こだわらないの。役作りや演技に献身的に取り組み、自分の役に何が必要かを鋭く感じ取っているわ。マーロというキャラクターが経験する旅を、俯瞰的に捉えているの。並外れた人だと思ったわ。」  ライトマンは、以前からロン・リヴィングストンを高く評価していたので、夫のドリュー役に彼を招待した。「ロンは現代の役者の中で、最も過小評価されている至宝のような一人だ」とライトマンは指摘する。「彼はとても優れた才能に恵まれ、繊細でユーモラスだし、すべてのシーンにリアリズムをもたらした。」
セロンは、今までとは大きく違う映画に参加できたことを喜び、こう締めくくる。「この映画が、大好きよ。こんなにユニークなストーリーには、めったに出会えないわ。私たちは、今まで映画で描かれてきた親の役目を見慣れてしまって、それが本当だと思いこんでいる。この映画は、そういう見方を覆すの。鋭いウイットや共感力があって、母でいること、親でいることについての容赦なく率直な真実を見ることがとても楽しいわ。」